桃源郷の人々

その1「安全・安心でおいしい桃づくり」

感謝農園平井 平井國雄さん

桑折町に広がる15ヘクタールにも及ぶ広大な土地で「感謝農園平井」(以下、感謝農園)を営む平井國雄さん。
福島中央卸売市場の青果部門で30年ほど勤めた後、父親の跡を継いで農業を始めて10年がたちます。

市場にいる間、良い桃、悪い桃、あらゆる桃を見てきました。良い桃は大きくて赤く、一口かじれば歯触り舌触りが心地よく、口いっぱいにみずみずしさと酸味と甘みが調和よく広がっていきます。
一方で、見た目も味も悪く、値段の付かない桃もあります。悪い桃を作ろうと思って作る人はいないのに、なぜそうした差が生まれるのでしょうか。


「感謝農園平井」を営む平井國雄さん

自ら実際に栽培して分かった一つの答えは、「時期を逃さず捉えて、必要なことを必要な時にやれるかどうか」ということでした。
「一生懸命やれば、それに木は応えてくれて裏切らない。ごまかすと、やっぱりそれなりにしかできない」。
そこに農業の面白さを見いだし、現在も毎日圃場(ほじょう=作物を栽培する田畑)に足を運び、きめ細かく桃の様子を見ています。

農園を引き継いだ後、平井さんは低肥料・低農薬での桃栽培に取り組み始めました。肥料や農薬に頼らなくても立派な実をつける丈夫な木に育てるために、あえて木にとって厳しい環境を用意します。


無事開花した桃の花

十分に肥料を与えられず、ほぼ雨水しか与えられない木は、一生懸命に根を張って、その分丈夫に育っていきます。
「自分で生きようとしているものを、頑張れるように人間が手助けさえすればいい」というのが、平井さんの基本的な考えです。

化学肥料の代わりに刈った草を根の回りに置き、微生物による有機分解で有機土、有機質肥料として桃の栄養にします。
農薬も可能な限り減らし、殺虫剤を使わなくても済むように、害虫や病気を運んでくる蛾(が)を防ぐ防蛾灯「イエローガード」を試験的に導入しています。


左のポールにあるのが防蛾灯「イエローガード」

農薬や肥料を与えて効率的に作物を生産することで急速に拡大してきた近代の農業は現在、環境を守りながら自然と一緒に作物を育てる「環境保全型農業」へ大きく転換しようとしています。
消費者もメディアなどを通して情報を知り、「食の安全」に対する意識が高まっている中、その転換スピードはさらに速まっていくでしょう。

そうした世の中の流れに先駆けた農法で桃を育て、持続性の高い農業生産方式を導入している農業者として県から「エコファーマー」にも認定された感謝農園。
最近では、ウェブ監視カメラや温湿度・土壌水分を測る環境計測センサーなどの先進的な技術も導入し、環境・経済・社会的に持続性のある生産方法で品質の良い農産物の供給を目指す「グローバルGAP」認証の取得にも取り組んでいます。

環境に配慮した農法で栽培し、木の生命力を最大限に引き出した安全でおいしい桃であることを消費者に知ってもらい、信頼を持って選んでもらいたいという平井さん。
「この桃には、ビタミンCとともにビタミンI(愛)もたっぷり入っているんです」と顔をほころばせます。

その2 育てる苦労、その手間に応える桃 につづく

  • その1「安全・安心でおいしい桃づくり」
  • その2「育てる苦労、その手間に応える桃」
  • その3「新人スタッフの思いと未来への希望」