桃源郷の人々

その2「育てる苦労、その手間に応える桃」

感謝農園平井 平井國雄さん

感謝農園平井 平井國雄さんとスタッフの菅野さん

自然を相手にする桃栽培で、生産者が最も苦労するのは天候です。
1年間の日照時間と温度で桃の生育状況は変わりますが、発芽から開花期にかけては霜の影響があり、順調に育ち過ぎると逆に春先の霜(そう)害に遭いやすいという難しい面もあります。

実を付けると、今度は雹(ひょう)や強風に悩まされます。実が小さなうちは表面に生えた毛が障害物から守ってくれますが、大きくなってくると毛が抜け、まともに雹の被害を受けたり、強風で実が擦れることであざになってしまったりします。
傷やあざが付いた桃はジュース用として、わずかな金額で引き取られてしまいます。


つぼみを付けはじめた平井農園の風景

天候のほかに苦労するのが、周囲にあるほかの畑で野菜や果物にかける消毒薬の付着です。
もちろん、平井さんも周辺の農家も飛散を避けてできるだけ風のない日に消毒薬を散布しますが、収穫まで二十数回にも及ぶ散布全てを無風の日に行うことは現実的には難しいのです。
出荷までの農薬検査で規定外の薬の成分が検出された桃が1つでもあれば、感謝農園の桃は全て出荷できなくなってしまいます。

低農薬に取り組む感謝農園では、さらに多くの注意が必要になります。
例えば桃の木には「せん孔細菌病」という病害があります。
秋の新梢(しんしょう)に侵入し、越冬した病原菌が春になると増殖してできるもので、表皮が紫黒色に変わり、枝に亀裂を生じさせます。
この菌は風を伴った雨に混じって拡散し、多くの木に影響を与えてしまいます。
また、害虫が桃の木1本の一部に卵を産み付けると、それがふ化して風に乗り、いっぺんに広がってしまいます。


桃の病気を最小限に防ぐため細心の注意を払います

そういう異常のある枝を見つけ次第、圃場から出すことで未然に被害を最小限に防ぐことができますが、それには膨大な労力がかかります。
毎日畑を歩いて、木の1本1本、1枝1枝がどういう状況になっているかを上から下から細かく見ること。
それを平井さんは「調子はどうだと、桃と会話するように見て歩く」と例えます。

正常に育った芽、花、実の中でも、より良い桃に育つ見込みのあるものだけを見定め生かしていくのが間引き作業です。
1本の桃の木には1000個ほどの花芽が付きますが、摘芽・摘花・摘果を行い、最終的には枝1本につき桃1個を実らせていくという気の遠くなるような作業を重ねます。


摘芽作業の様子

そうした苦労のかいあって、ついに枝から桃を収穫する時は格別の思いで、「人に食べさせたくないほど」だといいます。
まさに、娘を嫁がせるような気持ちなのでしょう。一般的な栽培に比べて手間も苦労もかかる農法を選択していますが、「このやり方で間違ってはいないという自信は少しずつ出てきました」と平井さん。
「木がちゃんと応えてくれていますから」と目を細めます。

その3 新人スタッフの思いと未来への希望 につづく


摘芽作業はテンポよく進められていきます

  • その1「安全・安心でおいしい桃づくり」
  • その2「育てる苦労、その手間に応える桃」
  • その3「新人スタッフの思いと未来への希望」