桃源郷の人々

その3「新人スタッフの思いと未来への希望」

感謝農園平井 平井國雄さん

2015年春、感謝農園には新卒3人を含む5人のスタッフが新たに加わりました。
その中の一人、菅野かすみさんはかつて平井さんも通った福島明成高校の卒業生です。
彼女が感謝農園で働くことになったのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響がありました。

果樹農家を営む実家で育った菅野さん。中学2年の時に震災を経験し、その後の原発事故による風評被害を目の当たりにし、農業高校への進学を決めました。
3年間農業について学び、さらに実践的な作業の経験を通して家を継ぐための技術を身につけたいと、感謝農園で働くことを志願しました。


感謝農園平井でこの春から働く菅野かすみさん

さらに大きな理由は、実家で生産していた同地域特産の「あんぽ柿」が、震災後に生産を止めてしまったことだといいます。
幼いころ、柿のヘタむきを手伝っていた記憶が菅野さんにはあります。「あんぽ柿ができるまでの過程をもっと詳しく知りたい」と、いち早くあんぽ柿の製造を再開した感謝農園で学ぼうと思ったそうです。

平井さんも期待を掛けています。
「農家というのは朝が早くて、氷点下の寒い日、炎天下の暑い日は大変なんです。時期によっては日曜も出てきてもらわないといけないし。それでも何とか歯を食いしばって、まずは1年間頑張ってほしい。そこを乗り越えれば、あとは大丈夫じゃないかな」


菅野さんに対する期待を語る平井さん

まだ働き始めてわずかですが、「日々木を見に来ているうちに、だんだん大きくなって、花が散ってきて、これから自分たちで手入れしてきた桃がいよいよ実になって出荷できるんだ」と、あらためて農業の面白さを実感している菅野さん。
「私の作った桃で人を笑顔にしたい。全国の人に食べてもらって、おいしいと言ってもらいたいです」と目を輝かせます。

菅野さんのように復興の一助になりたいという若い人にとって、高齢化が進む農業はチャンスでもあると平井さんは言います。
「若い人たちも震災でいろんなことを見ていますので、私たちの力で何とかやろうという人がどんどん集まってきてほしい」と期待を寄せています。


「もうかる農業」を目指す

そのために、「もうかる農業」を目指す平井さん。
例えば、独自の販売ルートを開拓することで、農家の手元に残る収入を確保する。
または、均一な生産方法によらない付加価値のある桃を育てていく。
あるいは、需給のバランスを見て収穫時期をずらし、十分な価格が付く時に出荷する。
そうした工夫で経営を安定させ、現状は他産業に比べて格段に低い農家の所得を上げていくことで、新規就農者へ希望を示したいと考えています。

インターネットを通じた発信もその一つ。
感謝農園でどのように桃が栽培されているか、どのような思いが込められている桃なのかを、全国の多くの人に知ってもらいたい。そして、「できれば桑折町に来て、桃の木に触れてほしい」と呼び掛けます。

  • その1「安全・安心でおいしい桃づくり」
  • その2「育てる苦労、その手間に応える桃」
  • その3「新人スタッフの思いと未来への希望」