桃源郷の人々

その1「グローバルGAP認証取得、その苦労」

感謝農園平井 平井國雄さん Part.2

前回の取材後、「グローバルGAP」認証を取得した感謝農園平井の平井國雄さんを再び訪ねました。すでにJAが取得した「JGAP」(農林水産省が導入を推奨する農業生産工程管理手法の一つ)にのっとって福島の名産「あんぽ柿」の生産を行っていた平井さんでしたが、自分たちで一から認証を取得することは、比べものにならない手間がかかったそうです。

栽培に関することだけでなく、従業員の健康管理や安全、園地の安全性など広範にわたるチェック項目の数は何と200以上。それも決められたものではなく、自ら設定していかなければなりません。農薬の保管、廃棄物の処理、農具の管理・洗浄、畑へ向かう車の中の清潔性に至るまで一つ一つ、営農の中でのリスクを洗い出しました。「犬や猫をトラックに一緒に乗せていくなんていうのは、もちろん駄目ですよね」と笑います。

それは、早くから循環型の農業に取り組んでいた平井さんですら圧倒される大変な作業でした。「やっていたつもりだったんです。しかしながらグローバルGAPを勉強する中で、まだまだ未熟なんだなと痛感しました。世界ではそういうことまで配慮しているのかと」。一方で、自然や地球の環境へ徹底的に配慮したその姿勢には共感を覚えました。「桃というのは自然の中から生まれてくるものですが、感謝しながら自分たちも恵みを頂くという気持ちがいっそう深まりました」と実感を込めます。

もちろん平井さんだけでなく、パートタイマーも含めた約30人の従業員全員に共通認識を持ってもらうことが欠かせません。保健所や労働基準監督署などから専門家を呼んで勉強会を行うとともに、日々の仕事では健康管理から徹底。手足に傷はないか、体調を崩していないかを確認し、少しでも異常があれば休ませるか、出荷する商品に触れない別の作業に回ってもらいます。口頭確認で終わりにするのではなく、パナソニックが開発に携わったタブレット端末用アプリを使って従業員の日々の状況を全て記録として残しているそうです。

リスクマネジメントやBCP(事業継続計画)についても対策を講じました。万が一、問題が発生した場合に迅速かつ適切に対応できる体制を整備。問題が起きないように最大限の注意を払うことはもちろんのこと、何か起きてしまった時の対応一つが消費者の信頼を左右します。東京五輪に向け、そうした体制づくりは今後、グローバルな評価にも結び付いていきます。

今回「グローバルGAP」の認証を受けたのは、15ヘクタールにも及ぶ広い感謝農園の中でも、桃を植えている圃場の10分の1程度に過ぎません。農地が集積されていないため周辺の生産者さんからの影響は避けられないため、まずは確実に取得を目指そうと、より安全な場所に絞り込んで取り組みました。桃のほかにもサクランボ、カキ、ナシ、ブドウ、キウイフルーツと挙げればキリがないほど多くの果実を育てている同農園の全ての出荷品目が対象になるよう、これを皮切りに取り組んでいきます。

多くの生産者が手掛ける果樹畑が広範に広がる桑折町ですので、そのためには周辺で営農している方との協力も不可欠。「私のところだけではなく、みんなで共通認識を持ってやっていく必要があります」と平井さんは語ります。

その2 苦労の中、それでも取り組む理由は につづく

  • その1「グローバルGAP認証取得、その苦労」
  • その2「苦労の中、それでも取り組む理由は」
  • その3「海外展開、販路拡大、見据える将来」