桃源郷の人々

その3「海外展開、販路拡大、見据える将来」

感謝農園平井 平井國雄さん Part.2

「グローバルGAP」認証取得を目指した理由の一つでもある将来の夢は桃の輸出。日本の果物は海外で高級品として取り扱われることも多い一方、嗜好や食文化の違いもあり輸出で成功しているのはほんの一例です。

さらに福島の生産物においては原発の問題が立ちはだかりますが、平井さんは「震災まで、海外はもちろん日本国内でも福島はどこにあるのかも知られていませんでした。それが原発事故の後は、地名も場所もみんな分かるようになったんです」と、努めて前向きに捉えます。「そんな福島でしっかりと検査をして安全宣言を出している。ならば話だけでも少し聞いてみようかと思ってもらえる方もいるでしょうから、そこからつながりを持っていければ」と考えています。

一方で国内においては、桑折町が誇る「献上桃」をより多くの人に知ってもらおうと、ICTで情報を発信し独自の販路拡大を狙います。前述のあんぽ柿は生産だけでなくパッケージングまで園内で行っていますが、流通時はJA伊達みらいや伊達果実農業協同組合の製品として出荷されるため「感謝農園平井」の名前は表に出ません。「感謝農園」と書かれたシールが貼られた自社製品をネットを通じて販売し、全国から「あそこのものはおいしい」と言ってもらえる未来を見据えます。

生産拡大に向けては、圃場集積による効率的な営農も鍵になります。桑折町に限らず果樹生産者は高齢化し、土地は空いていく一方。これもまた「ピンチはチャンス」と捉え、「福島県を全部やってやろうというくらいの気持ち」で挑みます。1台1,000万円もする農業用機械も、個々の生産者が1日に使う時間はわずか30分程度。土地を集積すれば稼働率を上げることができ、生産者が共同で持てば経費削減も図れます。より大規模になれば、ドローンなど小型の飛行機を使って消毒したり、人工衛星を使って圃場を管理したりと、先進的な取り組みも可能になります。海外はもちろん、日本でもそうした農業が行われる時代はすぐそこに来ているのかもしれません。

米国の政権交代で見通しがつかなくなったTPPの問題においても、「効率化を図れば世界に立ち向かうことができるはずなんです」と平井さんは力を込めます。その背景には世界的な食糧不足があり、本来日本にはそれを賄える生産力のポテンシャルがあります。それが発揮されていない現状に歯がゆさを感じています。

「今までは小さな土地を開墾して、それをみんなが守ってきました。これからは、それを集積していかなくちゃ駄目なんです。われわれ農家が認識を変えて、国や農協に守られて依存してしまった現状から自立しなくてはいけない」と平井さん。「そういう認識を持って挑戦するところがこれから生き残っていけるはず」と、今日も夜更かしの人が床に就くような時間に「むちを打って」仕事を始める平井さん。「だけど確実に時代は変わりつつありますよ。若い人たちを中心に、そういう考えの人たちが集まってやる時代になっていくでしょう」。笑顔でそう話す目は、何よりも説得力を持っていました。

  • その1「グローバルGAP認証取得、その苦労」
  • その2「苦労の中、それでも取り組む理由は」
  • その3「海外展開、販路拡大、見据える将来」