桃源郷の人々

その3「冷静な現状分析の先にある可能性」

はねだ桃園 羽根田幸将さん

はねだ桃園の耕地面積2.7ヘクタールのうち、祖父の代から所有している土地は0.4ヘクタール程度。この1年半ほどの間で次々と他の圃場に空きができ、それを借り受けることで規模が広がりました。すでに家族労働では賄えない大きさにもなってきましたが、今後もそうした状況は続いていきそうです。

背景には生産者の高齢化があります。「世の中で耕作放棄地という言葉が話題になっていますが、まさに自分が住んでいる町でそういうことが起きているんだなと。それを私たち若手が拒めば耕作放棄地が増えていくだけ。できる範囲で受け入れて、自分が貢献できるところを頑張って耕していきたい」といいます。

生産拡大は「グローバルGAP」認証取得で視野に入る輸出にも好材料ですが、羽根田さんは「国際的な事情やニーズを知らなければ海外ではまず売れない。生産量も個人では限界があります」と冷静に分析しています。「海外に行けば高く売れるということでもないですし、別のコストもかかります。一方で、例えば岡山のある農家さんは高級志向で売っていて、1ヘクタールほどの面積の桃だけでうまくいっているという事例も聞きます。小規模で付加価値を高くするやり方が国内でビジネスとして成功しているのであれば、私たちにも可能性はあります」と力を込めます。

何しろ桑折町は「献上桃」の里。その品質にはもちろん自信があります。「ここの桃はパリッとした歯応えがあり、それでいて食べると甘い。それが全国的にはあまり知られていません。まだ知られていない福島の桃の良さを分かってもらえれば、もっとファンが増え、販路を広げられるんじゃないかと思っています」。無理に海外へ出ていかなくても、実は国内の市場はまだまだ大きいと見ています。

そのための一つの手段がネット販売。はねだ桃園でも試験的にAmazonでの販売を始めました。「直売所はお客さんに来てもらわないと始まらない。ネットであれば、桃を食べたいお客さんが探した時に選択肢になります。福島の桃ならではの食感と味、さらに私たちがどういう取り組みをしているかを分かって賛同してもらえれば、値段が高くても買ってもらえるはずです」

羽根田さんが福島に戻って迎える3年目のシーズン。圃場の管理や桃の栽培においてはまだまだ課題も多く失敗もつきものです。それでも、「未熟さを埋めるためには失敗を糧にするのが一番手っ取り早い。その経験が多いほどいいものを作れると信じていますので、そういった意味では早く就農して良かった」と前向きにとらえ、「私たちの取り組みに興味を持ってもらい、同じように若いうちから就農する人が出てくれば」と期待を込めます。

  • その1「若くして継いだ家族規模の桃園」
  • その2「認証取得の苦労を通して得たもの」
  • その3「冷静な現状分析の先にある可能性」